三井化学グループ

昨今、社員の健康増進についての取り組みが注目されており、歯科健診サービスを導入している企業が増加傾向にあります。そこで今回は、実際に歯科健診サービスを導入している三井化学株式会社 本社健康管理室長 統括産業医 井手 宏先生(以下、井手先生)、三井化学健康保険組合 常務理事 横田 敬さん(以下、横田さん)、三井化学健康保険組合 木内 良枝さん(以下、木内さん)に、企業として歯科健診サービスに取り組む理由や導入後の変化などについてインタビューを行いました。


社員の健康は必ず企業の財産に!将来を見据えての基盤づくり

「健康重視経営」に込める思いとは

「健康重視経営」に込める思いとは

──「健康経営」を掲げる企業が多い中、三井化学グループ様が「健康重視経営」を掲げている理由を教えてください。

井手先生: 実は当社でも、2021年度までは「健康経営」を掲げていました。しかし、健康経営となると「社員の健康=会社の利潤」という考えに偏りすぎているように感じ、2022年からは純粋に社員の健康を重視する意味合いを含め「健康重視経営」に変えました。当社では、短期的な視点で見れば会社にとって損になってしまうことでも、社員がより健康になるのであればそれは喜ぶべきことなのではと考えている部分があるのです。

──社員の健康がゆくゆくは会社のメリットにつながっていくというお考えでしょうか?

井手先生: そうですね。将来的に見れば社員の健康は確実に会社の事業を継続するうえで、とても大切な要素になると考えています。ただ、あまりにも社員の健康と業績を連動させて考えるという風潮には疑問に感じる部分もあって、より「人が一番」であることを中心に据えるために健康重視経営に変えたわけです。


歯科健診と健康診断は同じくらい重要なもの

歯科健診と健康診断は同じくらい重要なもの

──健康経営を掲げる企業は多くありますが、歯科健診にまで取り組まれている企業はまだ少ないように思います。なぜ、長年、歯科健診に取り組まれているのでしょうか。

井手先生: 当社は化学会社のため酸を使う機会が多く、そのような企業は歯牙酸蝕症健診を行わなければならないという法律のルールがあります。歯牙酸蝕症健診を行っているうちに、歯牙酸蝕症ではない理由でベテラン社員の歯の状態が悪化しているということに気が付いたのです。年齢とともに歯の健康が失われるのであれば、社員全体を対象とした歯科健診を実施した方がよいのではないかと考えたのが歯科健診を始めたきっかけです。

──歯科健診は今後も継続される予定ですか?

横田さん: 元々、当社の健康保険組合では、お口の健康は全身の健康につながるという認識を持っていたので、歯科健診は健康診断と同じくらい大事なものであると考えています。これからも社員の健康維持のために、健康診断と歯科健診の両方を継続していく考えです。

歯科健診と健康診断は同じくらい重要なもの

──他の企業では御社ほど歯科健診を重要視されない傾向にありますが、その点はどうお考えですか?

横田さん: 他の健康保険組合の方にお話しを伺った中では、すべての健診を実施できればそれが一番よいけれど、限りある予算の中では現実的に歯科健診よりも、まずは健康診断をというお考えになるようです。ただ、当社の場合は、多少のコストがかかっても社員の健康を第一にという基本の考えがあります。そのため短期的なプラスマイナスではなく、長期的なスパンで社員も会社も皆が幸せになる方法を考えていきたいと思っています。


歯科健診が早期発見・早期治療のきっかけに

歯科健診が早期発見・早期治療のきっかけに

──歯科健診サービスを導入してどのようなメリットを感じられましたか?

木内さん: 歯科健診がきっかけとなってむし歯や歯周病を指摘され、すぐに歯科医院に行く人も少なくありません。歯科健診を受けなければ、むし歯や歯周病に気が付かなかった可能性も高いので、歯科健診が通院と治療のチャンスを作るという点は非常に大きなメリットになると考えています。
また、歯科健診を受けて、自分の歯磨きの方法が正しいのかどうかをその場で確認できる点もメリットの一つだと思います。歯科衛生士の方に「しっかり磨けていますよ」と言われるとうれしくなって、より一層頑張ってケアを続けられるといった社員の声も届いています。

──歯科健診サービスの導入によって何か変化はありましたか?

木内さん: 歯科健診を受けることでセルフケアの方法が正しいのかどうかの確認ができますし、年に1回はお口の状態をチェックしてもらえるので疾患に気付くきっかけにもなります。歯科健診によって、社員の予防の意識はどんどん高まっていると感じています。

歯科健診が早期発見・早期治療のきっかけに

──歯科健診の受診率を上げるための取り組みがあれば教えてください。

横田さん: 歯科健診を受診していない社員に直接声がけをしたり、掲示物で健診のお知らせをアナウンスしたりしています。また、歯科健診の会場で試験的にデンタルケアグッズの販売を実施してみました。
歯科医院でしか買えないケア用品を割安で販売したところ、歯科衛生士の方が症状に合わせたおすすめのグッズを教えてくださったこともあり、健診を受けた社員の半数程度がグッズを購入していたんです。
グッズの販売が目的ではないのですが、歯科健診を受ければ普段は買えないケア用品を割安に購入できるという点も歯科健診を受ける一つのきっかけになるのではと考えています。


社員が自ら自分の健康と向き合える仕組み作りをスタート

社員が自ら自分の健康と向き合える仕組み作りをスタート

──今後、社員の健康を増進するために新たに考えている施策はありますか?

井手先生: 今年から、社員のヘルスリテラシーの向上に向けた施策を始めています。
当社では、社員の健康状態の回復や健康維持のために健康管理室が熱心に指導を行ってきました。ところが、何かあっても健康管理室がどうにかしてくれるという意識が身に付いてしまったのか、自分の健康を受け身で捉えてしまう傾向が強まってきたのです。そこで今年から、社員が自立的に自分の健康管理をする力を養う取り組みを始めています。

──具体的にどのような取り組みをなさっているのでしょうか?

井手先生: まず、社員向けの健康情報サイトを立ち上げました。そこに社員の健康診断の結果を紐づけ、健康診断で指摘された事項があれば、関連する記事へのリンクが自動的に表示される仕組みを作りました。
そのため、健康診断の結果を紙で返すのではなく、PDFファイルをサイト内に格納して、自分で結果を見に行く形式に変えています。健康診断の結果を見れば、関連する情報も必ず表示されますので、社員が自分に必要な健康情報を調べ、自分の健康としっかり向き合えるようになればと考えています。

社員が自ら自分の健康と向き合える仕組み作りをスタート

──社内でも好評の健康増進の取り組みがあるとお伺いしましたが。

木内さん: ヘルシーマイレージ合戦ですね。ヘルシーマイレージ合戦は、ウォーキング、ジョギングなどの運動内容・運動時間や、野菜から食べる、就寝の2時間前は食べないなどの食事に関する項目などを自分で設定・記録し、マイルを貯めることで賞品と交換できる取り組みです。年に2回実施していますが、だいたい1回あたり4,000人近い社員が参加しています。だいぶ前から実施しており、社員にも定着しているので、参加率は4割~5割ほどになります。

横田さん: そのほかにも、事業所ごとに健康増進推進活動を実施しています。参加率が高いものや評判のよい取り組みがあれば、ヘルシーマイレージのような会社全体に展開できる施策にしていきたいと考えています。


歯科健診サービスの導入は社員の予防意識を確実に向上させている

歯科健診サービスの導入は社員の予防意識を確実に向上させている

健康重視経営を掲げている企業ならではの取り組みをお伺いしました。三井化学グループ様では、以前よりお口の健康が全身の疾患と関係しているという認識を持ち、積極的に歯科健診に取り組んでいらっしゃいました。歯科健診の受診は、むし歯や歯周病に気付くよい機会となり、社員の方の予防意識を確実に高めているようです。
今後、三井化学グループ様のように歯科健診に取り組む企業が増えれば、オーラルケアの重要性も広がっていくでしょう。健康診断と同様に、歯科健診もお口の健康をチェックする大切な機会であるという意識が浸透していくとよいですね。


▼ 取材協力
三井化学株式会社 https://jp.mitsuichemicals.com/jp
三井化学健康保険組合 https://www.mitsui-chem-kenpo.or.jp
〒104-0028 東京都中央区八重洲2-2-1
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